表紙へ戻る お気に入りのページを最大50件まで
記憶できる便利な機能です。
H18.2.18(土) 日本経済新聞夕刊
○ 生活ファミリー 子守唄復権を願う 心結ぶぬくもり
【6面】
 身近な援助の乏しさなどで育児に悩む親は多い。不安な気持ちが子どもとのコミュニケーションに影響することもある。「そんな時は子守唄(こもりうた)を歌って」と話すのは特定非営利活動法人(NPO法人)日本子守唄協会(東京)の代表、西舘好子さん。親子を和ませる子守唄の効用を語ってもらった。

 「子守唄って簡単なんだ」「この子寝ちゃった」。日本子守唄協会の子守唄教室では、毎回こんな声を上げながら涙を流して喜ぶ母親の姿が見られる。
 彼女たちだって驚いているだろう。ほとんどの人は幼稚園などの行事として、義理で参加しただけ。「子守唄は暗い」「育児の役に立たない」。そんな先入観を持っている人もいる。
 ところが教えを受け皆で歌うと、なぜか泣けてくる。ある参加者は「親の顔とお月様が浮かんできた」と言った。昔、母が歌ってくれたのを思い出したのだ。そして論より証拠、むずかっていた赤ん坊は腕の中ですやすや眠り、すっかり安心した自分がいる。「毎日歌ってみよう」「少し子育てに自信がついた」。母親たちは笑顔で帰っていく。
 子守唄協会を設立したのは六年前のこと。働きながら家事と育児をこなす女性は珍しくなくなった。しかし、働きバチの男性の暮らしぶりは変わらず、働く母親も時間に追われ、子どもと向き合うひまもない。時には子を疎ましく感じる人さえいる。親子の絆は守れるのか。そんな疑問を持ったのがきっかけだ。
 子守唄は子どものまぶたの原風景。楽器や音楽CDはいらないし、歌詞やメロディーも即興でよい。大事なのは親が声と体のあたたかみで、愛情を子どもの心に伝えるということだけ。だから育児の難しい時代に、親子のきずなを守る力を持つと考えた。
♪    ♪    ♪
 協会ではこれまでに五千曲以上、国内の子守唄を収集。唄の起源は古代にさかのぼることがわかってきた。歌詞も寝かしつけるためのものだけでなく、子どもをおぶりながらの農作業や、帰らぬ父親を嘆くものなど、育児の大変さを語りかけるものが少なくない。
 母親を和ませる効果もあるようだ。東京大学名誉教授の小林登先生がNHKの協力で行った調査によると、子守唄を歌うとき、ほぼ四割の母親が和んだり、勇気づけられた気持ちになると回答している。子守唄教室で泣く母親たちも同様だろう。子守唄は人間の本能から出た、自然な子育ての行為といえるのだ。
 ところが子育ての現場では、本能はすっかり失われているらしい。「歌うと子どもは何分で寝ますか」「笑い出すうちの子は問題があるのでしょうか」。協会には、母親たちからこんな問い合わせの電話がくる。
 育児が情報頼みになった弊害だろう。便利は保育園はどこか。どんなおけいこごとに通わせればよいか。テレビや雑誌、インターネットに子育て情報はあふれている。核家族化が進み、身近に育児経験者のいない親は、その情報に頼りがちだ。しかし子育てが情報通りに進むことはない。子どもは一人ひとり全く違う。子どもとのふれあいをおざなりにし、情報に頼り切った親はとんちんかんな質問をすることになる。
 親が孤独や仕事の忙しさで厳しい状況にあることは、よくわかる。私の娘もその一人。二人の子どもを抱えながら、会社で勤め続けるのは簡単ではない。残業のため、私に泣きながら子どもの迎えを頼むと電話してきたことが、何度もある。私はそのたびに保育園に飛んでいき、夕食を作り、子守唄をうたって寝付かせた。娘に子守唄の効用を説明しても、「どうすれば歌う時間をつくれるの」と泣き出すありさまだ。
 ただ、それでも子守唄を忘れないでほしい。子守唄は、いわば親が子に伝える体の記憶。そのぬくもりを子どもは生涯忘れないだろう。夜でなく、朝、出かける前でもよい。幼子の体を抱きしめ、呼吸のリズムに合わせて、その日の仕事やどんなに愛しているかを、思いつくままの言葉とメロディーで伝える。それだけでも子どもは安心し、親も育児の喜びを取り戻すことができるはずだ。
♪    ♪    ♪
 子守唄協会のホームページ(http://www.komoriuta.jp/)では、各地の子守唄百曲以上を聴くことができる。歌い方がわからない人は参考にしてほしい。
 少子化が深刻になる中、様々な育児支援策が次々に打ち出されている。親が子どもと過ごす時間を少しでも増やし、みんなで作った時間は、ぜひ子どもとじっくり向き合うために使ってほしい。多くの親が子守唄を思い出すことを願っている。



ご案内
ご支援ありがとうございます
ご支援のお願い
NPO法人日本子守唄協会概要
NPO法人日本子守唄協会の歩み
プライバシーポリシー
メディア掲載記事紹介
メディア掲載記事
2006年メディア掲載記事
H18.3.5(日) 産経新聞
 「世界共通に根付いた思い」
H18.3.2(木) 産経新聞
 新連載「唄いつぐ」6日スタート
H18.2.20(月) 富山新聞
 子守唄「おひざでねんね」感動の響き
H18.2.19(日) 富山新聞
 きょう富山でフェスタ
H18.2.18(土) 日本経済新聞夕刊
 生活ファミリー 子守唄復権を願う
2005年メディア掲載記事
H17.10.25(火) 北國新聞
 子守唄の人気
H17.7.22(金)読売新聞夕刊文化欄
 ヒトには子守唄が必要だ
月刊「ボランティア」8月号掲載
 DVと、女性と、生きる路
H17.6(共同通信配信)
 インタビュー「こんにち話」
H17.5.27(金) 読売新聞夕刊
 よみうり寸評
2004年メディア掲載記事
2003年メディア掲載記事
2002年メディア掲載記事
2001年メディア掲載記事
2000年メディア掲載記事
Copyright(c)Japan Lullaby Association. All Rights Reserved.