表紙へ戻る お気に入りのページを最大50件まで
記憶できる便利な機能です。
H17.7.22(金)読売新聞夕刊
【文化欄】
ヒトには子守唄が必要だ
 
 笛や太鼓にさそわれて 山の祭に来てみたが・・・
 演壇で脚本家の市川森一さん(64)が、やおら歌いだした。北原白秋作詞、中山晋平作曲「里ごころ」。大正時代の童謡である。市川さんにとって、この歌は長年の謎だった。いつ、どこで覚えたのか記憶にないが、ときどき心に浮かび、浮かべば口ずさんでいる。なぜだろう、と不思議でならなかった。
 謎が解けたのは、最近。長崎県生まれの市川さんは10歳で母を結核で亡くしている。小学校低学年のころの担任教師が80を過ぎて健在で、会う機会があった。家庭訪問の時に「森一さんのお母さんが言ったこと」を覚えていた。「私の愛唱歌を息子も歌うようになった」。うれしそうな母だったという。
 <歌の力>が、母子の絆の強さを実証した。

 16日に都内で開かれたシンポジウム「子守唄よ、甦れ!」NPO法人・日本子守唄協会(西舘好子代表)の主催。同じタイトルの特集を組んだ藤原書店の「別冊『環』⑩」発刊を記念し、主な寄稿者が講演と討論を行った。
 本の巻頭鼎談で、市川さんと西舘さんに子守唄の本質を語った詩人・松永伍一さん(75)は病気で出席できなかったが、親が子を虐げ子が親を殺す時代に「なぜ子守唄が大切か」を深く考えさせる催しとなった。
 藤村志保、小林登、羽仁協子、中川志郎。女優も東大名誉教授(小児科)も音楽教育家も元上野動物園長も、ヒトが胎内にいる時から幼少期にかけて子守唄を必要とする訳を、それぞれの言葉で語った。
 多様な世界を内包する子守唄が「甦る」前には、幾つもの障壁がある。物の氾濫、野生の消失、少子化。子守唄の消滅は避けられないという悲観的な意見も分かるし、しかし諦めてはいけないとも思う。

 この日、講演の合間に各地の子守唄を披露した歌手・川口京子さんは、最後に童謡「里ごころ」を歌った。準備はしていなかったが、聴衆の希望には応えるのがプロだ。壇上の市川さんは終始ニコニコしていたが、その笑顔は泣いているようにも見えた。「里ごころ」が彼の子守唄なのだと思った。
(永井一顕記者)

「この記事は、読売新聞社の許諾を得て転載しています」
http://www.yomiuri.co.jp/policy/copyright/



ご案内
ご支援ありがとうございます
ご支援のお願い
NPO法人日本子守唄協会概要
NPO法人日本子守唄協会の歩み
プライバシーポリシー
メディア掲載記事紹介
メディア掲載記事
2006年メディア掲載記事
H18.3.5(日) 産経新聞
 「世界共通に根付いた思い」
H18.3.2(木) 産経新聞
 新連載「唄いつぐ」6日スタート
H18.2.20(月) 富山新聞
 子守唄「おひざでねんね」感動の響き
H18.2.19(日) 富山新聞
 きょう富山でフェスタ
H18.2.18(土) 日本経済新聞夕刊
 生活ファミリー 子守唄復権を願う
2005年メディア掲載記事
H17.10.25(火) 北國新聞
 子守唄の人気
H17.7.22(金)読売新聞夕刊文化欄
 ヒトには子守唄が必要だ
月刊「ボランティア」8月号掲載
 DVと、女性と、生きる路
H17.6(共同通信配信)
 インタビュー「こんにち話」
H17.5.27(金) 読売新聞夕刊
 よみうり寸評
2004年メディア掲載記事
2003年メディア掲載記事
2002年メディア掲載記事
2001年メディア掲載記事
2000年メディア掲載記事
Copyright(c)Japan Lullaby Association. All Rights Reserved.